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おのぼり物語   カラスヤサトシ著  竹書房 [読書]

   おのぼり物語.jpg
 漫画はあまり読まないが(小学生や中学生の頃は月刊誌や手塚治虫の漫画は本当によく読んでいたが)、朝日新聞の書評に載るコミックは大人も読めそうで、最近よく買っている。この本も書評に載った途端読みたくなり、梅田の紀伊国屋のコミック専門書店の午前11時の開店を待って買った。
 書評に書かれている通り、懐かしくも哀調を帯びた東京あこがれの物語。自分が東京へ出て行った頃、このような高ぶった気分で、あこがれの東京の街に住めることを楽しみたかったなあと思う。当時は新入社員で東京へ行った途端、いつ、どこでもヒト、ヒトで溢れかえり、こんな金をもたない人間にとって、楽しくもなんともないで会社と寮を往復するだけの生活をするなんて真っ平だと思い、ただただ関西に帰りたかった。それでもカネが無くても楽しめる学生時代や、その当時でも住むのが千葉県でなくて、東京23区内なら話は別で、東京の魅力を満喫できたろうなと思ったのは覚えているが。
私が東京で生活したのは(と言っても勤めたのが銀座とか、大手町で、居住空間は千葉県の松戸とか、検見川だ)昭和39年から49年にかけてで、今の東京が出来たのは昭和50年代以降だと思う。その頃経済成長していたのは、一人東京だけで、それで今の魅力ある東京が出来たのだと思う。地方は皆ミニ東京を目指し、多くは集客力を過大に見込み、失敗していった。
 ここに描かれているのは大阪をふるさとと思い、心中では常に両親のいる大阪へ回帰している。全く当時の私の心と一緒で、それが余計におのぼりさんの心根を分からせる。きっと彼はNさんが好きなのだろう。しかし、Nさんは心情では彼と気があっていても、Nさんは既に東京ナイズされていて、いつまでも大阪から離れられない、メガネをかけ、背の低い、生活力の無い、すなわち格好悪いおのぼりさんは結婚相手ではないのだろう。でも彼が有名な漫画家になれば話は別かも。筆名をカタカナに変更したことで、思い切ってNさんにプロポーズしてみたら。

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